生息地ポテンシャルマップ作成プロジェクト
生息地ポテンシャルマップとは
生息地ポテンシャルとは、様々な生き物が生息できる環境として、条件がどれだけ整っているか、という「適性」を数値化したものです。
私たちの住む地域のどのエリアのどんな環境に、どんな生き物が生息できるか、ポテンシャルを地図上に可視化(マップ化)します。
そうすることで、私たちの身近にどのような生き物たちが共に生きているのか、どのエリアに棲み分けしているのか、またエリア間で生き物の交流があるのか、など、地域の生物多様性や生態系について、様々なことが分かります。




多様な生き物を守る

気候変動を抑える

心のよりどころを作る

災害から地域を守る

水資源を守る

学習の機会を作る
地域の生物多様性を知る意味
地域の生息地ポテンシャルを知ることは、単にそこに住む生き物がどれだけいるのかを知る、というだけには留まりません。
多くの生き物が住む豊かな自然環境は私たち自身の生活や社会に、様々な機能(※生態系サービスといわれます)を提供してくれます。左図は代表的なサービス項目です。
我々が住む地域の生態系サービスのポテンシャルを知ることで、より豊かな環境や社会を形作っていくためのヒントを得ることができるのです。
堺市ポテンシャルマップ
堺市全域で公園や里山など「緑地」がどこに位置しているかを可視化したマップだよ!



緑地は、白~赤の色で塗りつぶされている場所にあるよ!
南部丘陵地はここ!

背景を見やすくするとこうなるよ!
南部から中部、港湾部にかけて、
大きな緑地が減っているけど、色んな「線」でつながっているのが分かるかな。

この線は「緑地のネットワーク」と呼ばれていて、緑地から緑地へ、生き物が住む場所を移動できるような繋がりを可視化しているんだ。
※今回は、蝶類の移動距離400mを参考に、蝶類が移動できる緑地間の繋がりを可視化しました。

南部丘陵付近を拡大して見てみよう!
南部丘陵の緑地から、周辺の小さな緑地に向かってネットワークが繋がっていることが分かるね!

緑地の塗りつぶし色の濃淡は、周囲の緑地とどれだけネットワークが繋がっているか、繋がりの中心地としての重要性を表しているんだ。
南部丘陵地は沢山の小さな緑地とつながりがある重要な緑地だから、濃い赤色でハイライトしているよ。


堺市中央の拡大図だよ!
南部丘陵から始まった緑地の繋がりが、大小さまざまな緑地を経由して市街地まで続いていることが分かるよ!

住宅地や工業地帯では大きな緑地を作ることは難しいけれど、小さな緑地を沢山作っていくことで、人の住むエリアまで生き物が移動してくれることが分かるね!


堺市港湾部の拡大図だよ!
ネットワークは細々と続いているけど、最後は海沿いの緑地までつながっていることが分かるね!



里山から海まで、生き物が移動できるエコロジカルネットワークを形成することは、生物多様性豊かなまちづくりには必要不可欠なんだ

実証例
堺市南部丘陵緑地
企業緑地と周辺保全区のネットワークを評価

企業緑地
市主催の保全活動エリア
蛾類 移動
蝶類 送粉
甲虫類 食草
蜂類
その他


植物:カラスザンショウ
昆虫:ナミアゲハ



植物:ススキ
昆虫:ヒカゲチョウ
植物の種類によって訪れる昆虫の種類が異なる
植物を中心としたネットワーク
都市部の
エコロジカルネットワークを可視化




生物間相互関係ネットワークとは、緑地や公園、河川敷や雑木林など、ある特定の生息地にどのような生き物が定着し、どのような営み(相互関係)をすることで、エコロジカルネットワークが維持されているのか、生物多様性の質=生態系の構造を評価するために重要な指標となるものです。多様な生き物が広く利用でき、お互いに関係する機会の多い緑地を構築することで、生物の相互関係ネットワークは大きくなり、エコロジカルネットワークで結ばれる緑地間での生物の交流が豊かになります。複雑かつ大規模なエコロジカルネットワークの形成と維持は、自然と共生する都市の形成、環境にやさしいまちづくりにも欠かせない要素です。特に、植物と昆虫の相互関係には幅広い多様性があり、昆虫による種や花粉の運搬によって草木の分布が広がるなど、エコロジカルネットワークの維持には必要不可欠です。
令和6年堺市スタートアップ推進事業では、南部丘陵における企業緑地と、市主催の保全活動エリア(堺の森活)との間の生物間相互作用ネットワークを可視化しました。このネットワークは二つの緑地でそれぞれ、これまでにどのような樹を植え育ててきたかによって、それを利用する様々な生き物の交流が生まれていることを示唆します。今回の分析では、19種の植物と387種の送粉・食草昆虫の相互関係ネットワークの可視化に成功しました。
堺市南部丘陵緑地
企業緑地と周辺保全区のネットワークを評価


草原や森林などの緑地の土壌には、数百~数万種の微生物が生息しており、その種類は土壌の質や環境、人の手入れ方法によって大きく異なります。
微生物には様々な種類があり、様々な機能を持っています。
たとえば、植物の根に定着し、養分や水分の吸収を助け、成長促進に寄与する菌根菌や、動物や植物の死骸などの有機物分解し、土壌の成熟化には欠かせない腐生菌などが存在します。
土壌微生物の多様性は植物の定着に影響を与え、生物多様性の基盤となる重要な要素であり、炭素や窒素の循環にも関与し、温暖化抑制などの環境調整にも寄与します。
よって、土壌微生物の多様性を評価することは、緑地という環境の重要な基盤となる土壌のもつ機能を評価するにあたって、重要な要素です。
一方、土壌の中の微生物は、目では見ることができません。そこでわたしたちは、森林の土壌を採取して「DNAを分析する」ことで、目には見えない微生物の機能の多様性を可視化しました!
西日本エリアの平均的な里山森林の値を比較対象として、堺市の森林の土壌微生物の機能の豊かさを評価しました。
その結果、里山森林の平均値と比較して、同程度あるいはより豊かな菌が存在することが明らかになりました!
堺市では、「堺の森活」として、下草刈りや木を切って植生を更新させる緑化活動を行っており、その効果が土壌微生物の機能からも確認できました!

市主催の保全活動エリア
企業緑地

菌の豊かさ
(比較対象)
西日本エリアの里山林
企業緑地
堺市
市主催の
保全活動エリア

わたしたちの取り組み
生物多様性ポテンシャルマップを用いれば、森林の中に入り込み、小さいものは微生物から大きいものは樹木まで、様々な生き物で構成されるネットワークを体験することができます!


微生物が構成するネットワークを農業に用いれば、農薬の使用を減らしたり収穫量を増やしたりと様々な効果が得られるんだ!